【復刻・民泊革命(第29回)】 特区民泊に新しい動き

 1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。 

 今年1月末に東京都大田区、4月より大阪府でスタートした特区民泊。6泊7日以上の宿泊に限定されることが災いし、大田区で20件、大阪府で2件の申請に留まる。が、ここに来て、今秋より2泊3日以上の宿泊を許可することも可能になると報道があった。今一度、特区民泊について考えてみたい。            

2泊以上にした場合の影響は?

 特区民泊が6泊7日以上ではなく、2泊3日以上になれば、民泊実施上の制限はかなり小さくなる。インターネットでは宿泊数の制限自体外したらどうかという意見も多かったが、もともと2泊以上、3泊以上で運用している人も多いので、民泊を実施する上でのハードルはかなり低くなると言える。

 ただ、7~10日以上の制限を自治体が決められるとしているのは政令であり、今秋この政令を改正するだけだとすると、それに合わせて自治体の方で条例を改正する必要がある。地方議会での対応も速やかに進むことが期待される。

10月から特区民泊が大阪市で実施されるのは大きい

 現在、特区民泊が実施されているのは、冒頭に挙げた2つの自治体。そこに、10月より大阪市が加わる。4月から大阪府がスタートしていて、10月から大阪市というのは、不思議な感じだが、保健所が設置されている市町村については、管轄が府にないそうだ。他にも、堺、東大阪、豊中、高槻、枚方の各市は、管轄が別になる。

 10月より大阪市全体で特区民泊条例が実施されるが、これは4月の大阪府に比べると影響が大きい。Airbnbでの稼働物件数を見ると、大阪市が大阪府全体の9割近くを占めている。物件の数で言うと、大阪市中央区が東京都新宿区や渋谷区よりも多いので、この地域で特区民泊ができるようになること自体大きいことなのだ。

その他の地域への広がりはどこまで?

 東京都大田区、大阪府を含め、国家戦略特区の中で「外国人の滞在に適した宿泊施設の提供【旅館業法】」について事業ができるのは、以下の地域になっている。

 東京圏-東京都、神奈川県、千葉市、成田市

 関西圏-大阪府、兵庫県、京都府

 福岡県福岡市、北九州市

 まだまだ実施されていない地域も多いのだが、民泊新法で届出を許されるのは180日以内という閣議決定もされているので、年間での稼働日数に制限がない特区民泊の価値が相対的に上がっている。千葉市、北九州市で条例制定が検討されているとのことなので、このあたりの動きも期待されるところだ。

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