【復刻・民泊革命(第32回)】 民泊の視点をホテル運営に取り入れる

1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。

 大阪市西区で営業しているTHE ROOMS OSAKA。民泊運営の視点をホテルの運営に取り入れたと言う。こちらの運営に携わる株式会社プロイントの菊池祐矢社長に話を聞いた。

ただの宿泊施設という概念を壊したい

 ホテルの部屋は、43㎡と大きく、ミニキッチンと洗濯機も設置してある。定員は6人まで入るそうだ。確かに、部屋そのものがビジネスホテルと違い、通常の住宅に近いイメージだ。「自分の家のように使ってもらう」というのがそのコンセプトである。

 菊池社長は「民泊の考え方を取り入れ、ホテル=ただの宿泊施設という概念を壊したい。民泊は、ゲストを自分の家に招いて、自分の文化をゲストにも体験してもらう。体験をシェアできるところにその良さがある。現在ホテルは需要が多いが、今後競争が厳しくなる可能性もある。その中で、これまでにないホテルのスタイルを作りたい」と言う。

 具体的には、部屋を住宅に近づけるだけではなく、1Fのカフェラウンジでフロントを兼ねて交流や情報発信をできるスペースを作ったり、屋上でイベントを行って交流を図るなどの工夫をしていくそうだ。

IT利用で、付加価値を高め、固定費を下げる

 また、アクティビティとのマッチングを図るメディアとも連携し、例えば18時にゲストが到着するなら、18時過ぎに体験できるアクティビティを紹介するなど、その人ならではの体験をサポートするとのことだ。

 ゲストとの交流や情報の提供を充実する一方、スマート化を図り、固定費を下げることもそのコンセプトとする。スマートロックや騒音検知器などを設置し、遠隔操作での管理を試みる。昨年9月より、ホテル運営をスタートし、今年中に以上のような体制になるよう、改善を重ねているそうだ。

 現在集客的にはOTAを通じた、通常のホテルへの宿泊を考える顧客が多くなっているが、将来的には民泊サイトでの集客に力を入れ、体験のシェアを求める顧客の比率を高めたいと考えている。また、同じコンセプトのホテルを北海道、沖縄、愛媛など、各地に広げる計画だそうだ。

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