【復刻・民泊革命(第37回)】 無許可民泊の通報サービスは?

1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。

 9月厚生労働省が民泊の実態調査を行うということで入札を行い、既に締め切られている。現在全国で稼働している民泊施設の多くは9割以上が無許可と見られるが、これを旅館業管轄の保健所で調べることは難しい。そこで、民間の組織に委託を行うこととなった。ホストの間では、これが取締りのきっかけにならないかと心配する声もあるようだ。

 民泊の調査と言えば、6月無許可民泊の通報を受け、対応する、民泊ポリスというサービスが報道された。その活動は現在どうなっているのか、運営者・株式会社オスカーの中込元伸社長に話を聞いてみた。

民泊の許可や認定は進んでいない

現在Airbnbで稼働する全国の民泊施設は4万件を超える。これに対し、特区民泊の特定認定を受けた物件は、大田区24、大阪府4の合計28件。ほんの一部だ。

簡易宿所の許可を取った民泊の件数は統計がないが、観光庁の宿泊旅行統計調査によれば、昨年7月の14530件だった簡易宿所は、今年の7月まで15610件に1080件増えている。この全てが民泊ではないだろうが、一定数が民泊施設だと思われる。ちなみに、同じ期間で、旅館は21600件から20140件に、ビジネスホテルは7610件から7340件に減っているので、簡易宿所の増加は際立っている。

簡易宿所の登録が増えていると言っても、全国で1000件程度なので、稼働する民泊に比べれば、わずか2%程度に過ぎない。4月に簡易宿所のハードルを下げたと言っても、民泊のほとんどは、依然として無許可のままである。

きっかけは自分のマンションでの経験から

こうした状況の中で、5月下旬から民泊ポリスは、無許可民泊の通報を受け、その調査を行って対応するサービスをスタートした。

きっかけは「自分のマンションでゴミ出しのルールが守られず、調べてみると民泊が原因だとわかった。わかっても、当時は誰にそれを言えば良いのかわからなかった。そういう人が沢山いるだろうと思って、活動を始めた」とのこと。中込氏はIT系の会社を経営しているが、この会社でこの事業に取り組むことにした。費用は、何と無料。ボランティアで運営している。

ある程度、通報はあるかと思ったが、思ったよりも多く、毎日5~10本、多い日は20本程度の日もあるという。スタートしてから、739件の通報があり、327件が特定、47件が特定不可、365件が未調査。通報は、ほぼすべてが匿名での通報だ。

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