観光庁が26日に公表した住宅宿泊事業法施行要領(民泊新法ガイドライン)。
自治体の民泊条例による「0日規制」などの過度な規制について、規制方法によっては「本法(※民泊新法)の目的を逸脱するものであり、適切ではない」としています。
「観光立国」を掲げる国は、年間4千万人への倍増を目指す訪日外国人客の受け皿として民泊の健全な普及を図ろうとする方針と各自治体では、条例で民泊を制限し住居専用地域で土日のみとする案などが示されています。国からの提案へ地方が規制・ブレーキをかけるのでれば、各自治体で地方独自のプロジェクトを自ら考え、前向きに国へ逆提案をする必要があります。
札幌市においても、(仮称)札幌市住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例(素案) が札幌市経済観光局観光・MICE 推進部から提示をされています。 民泊新法に関わるルールづくりについて様々な情報が飛び交う中、民泊現場ではゲストが民泊で滞在をし、その地域の暮らしを体感しながら日々貴重な体験をしています。そしてゲストがアウトした日には誰かが現場へ行き清掃をしているのです。
今、民泊現場では清掃員とのマッチングをするスマートフォン用アプリなどのツールが開発をされています。Airbnb等の仲介サイトのカレンダーと同期されており、ゲストのチェックインイン・アウトが確定すると自動的に登録された清掃員へLINEなどのメッセンジャーアプリで清掃を依頼されます。清掃員は、希望にあった日時条件をアプリ上で確認し受託します。清掃後、現場の画像をLINE上から報告送信します。さらには清掃員が受託した清掃金額一覧を確認することができ、一定金額に達するといつでも清掃費を受領できるという仕組みができつつあります。
Airbnbなど民泊仲介サイトは。貸す側も借りる側もお互いがある程度のスキル・能力を持った人たちの空間によるマッチングです。そこに地元清掃員が必要となるのですが、清掃員は主婦・主夫・高齢者・副業希望者・生活困窮者・障がい者など、様々な方が民泊清掃事業に参加しています。
清掃の依頼・受託・報告は簡易な一般化された仕組みでなければプレイヤーを増やすことは難しいのです。 このような仕組みによって、決められたシフトで雇用される仕事ではなく、自分自身が必要な時に必要な分だけ業務を受託することが可能です。そしてゲストに対しても、この地域の民泊は地域の人たちが持ち回りで心を込めて清掃しています。何か地域のことを知りたければあれば向かいの〇〇という喫茶店を訪ねてみてなど。 住居近くに民泊があることで新しい働き方を波及させることも可能です。そのような視点も含めて民泊清掃現場では誰でも使いやすい民泊清掃アプリ開発が進められているのです。
各地方自治体では住環境を守るため民泊を制限する方向に目を向けることも大事ですが、地域で急激に成長する民泊事業を、地域の発展にどう貢献させていくのか。地域でつくりあげた仕組みを地域外へ提供するという視点も必要ではないでしょうか。
南邦彦(みなみ・くにひこ) /一般社団法人北海道民泊観光協会 代表理事
元保育士養成施設教科専任教員。2014年より障がい者雇用で民泊管理・民泊清掃事業をスタート。北大公共政策大学院卒。公共政策学士。