1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。
このところ、民泊周辺でニュースが多い。規制改革会議で旅館業法改正について話し合われ、フロント要件の撤廃が検討されている。また、特区民泊が6泊7日以上から2泊3日以上に緩和することが閣議決定され、10月末から特区が施行される大阪市では来年1月から緩和される予定だ。民放では深夜民泊がテーマのドラマが始まった。
その中で、東京都新宿区が民泊問題対応検討会議を立ち上げ、10月26日その第1回があった。国が観光立国を目指して規制を緩和しても、地方で規制を厳しくしては、全く効果がない。特に新宿区は、東京都内でも最も民泊物件数が多い。そこで、新宿区の討議の様子を取り上げてみたい。
民泊に対して後ろ向きな新宿区
第1回は、民泊に関する制度の整備状況、及び区内での民泊の状況について区の方から報告があり、区の職員以外の委員がそれぞれ民泊に関する考え等を発表していった。委員は、町会、商店会、管理組合が1人ずつ、不動産関係者4人、警察署関係者4人、消防関係3人、区長や区の職員が12人、有識者2人の合計28人である。
出席するメンバー構成そのものも民泊によって起きる問題に対応する最前線のメンバーが中心で、現在民泊によってどのような問題が起きているか、それをどう取り締まるかという方向での議論であった。冒頭、区長からは、国は地方創生ということで民泊を活用する立場を取っているが、新宿に同じ考え方は適用できず、大量に発生する家主不在型民泊にどう対応するかが焦点であり、専門家の意見を聴いて新宿に合った民泊の考え方を客観的に検討したいとのことであった。
苦情件数の母数も考えてみては?
その中で、苦情件数が平成25年が3件、26年が6件だったのが、27年95件、28年9月までで115件と急激に増えているという報告があった。確かに、苦情件数だけ見ていると多くなっている。ただ、苦情の背景にある宿泊がどの程度あるかも考えてみる必要があるのではないだろうか。
Airlaboによれば、新宿区の民泊施設は現在3000件程度になっている。今年初めが2000件程度だったので、平均2500件、稼働率60%ととして考えると9カ月で40万泊程度あったと考えられる。すると、苦情の出た宿泊の率は、約0.03%である。1万件の宿泊があって、3件程度ということは、ほとんどは問題のない宿泊だったと思われる。