【復刻・民泊革命(第44回)】 鎌倉合法民泊 運営体験記3

1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。

 

 前回、前々回に引き続き、鎌倉の簡易宿所の運営体験を掲載する。

印象に残ったゲストたち

 宿には、様々なゲストがやってくる。

 宿は10人用の部屋で広いのだが、カナダから一人でやってきた中年の男性がいた。1人で泊まる人は珍しいので、どういう人だろうと思ったのだが、カナダで弁護士をしている人で、鎌倉の他の宿に2泊くらいしてから来ると言う。その間、鎌倉周辺の山々をハイキングして回ったそうだ。日本には2年に1度来ていて、15回目とのことだった。

 カンボジアから来たイギリス人とイタリア人の夫婦。フィリピン人のベビーシッターと赤ちゃんを連れてきた。鶴岡八幡宮でイタリアのオペラが上演されるのを見に来たそうで、自分も芸術に関心があると伝えると、オペラのチラシをくれ、色々説明してくれた。

 スイスの若い男性から予約が入り、日本各地を彼女と1ヶ月ほど旅行していると言う。英語で全面的に対応しないといけないかと心配したが、彼女は日本人の画家で本人も日本語が少し通じる相手であった。宿のリビング天井に画家が天井画を描いてくれているのだが、この彼女からも小さな絵を描こうかと提案を頂いている。

 1万5千円でアルゼンチンから5人が泊まった時は、一人あたりの宿泊単価が低くなって若干不安を感じたが、話してみると奥さんがタンゴ歌手だった。CDにサインした物をプレゼントされた。

 オランダから夫婦が来たが、帰った後すでに掃除が終わっているかのような状態で、折り紙で作った鳥がテーブルの上に置いてあった。ご主人が何十年も合気道を続けているそうで、礼の精神をしっかり理解されているのだろう。

 

ゲスト対応は人の好きな人が良い

 鎌倉に泊まりに来る外国人は、日本に対するリスペクトのある人が多い。旅館業の先輩には、布団の宿はベッドの宿よりも日本に対するリスペクトの度合いが高い客が来るので、クレームがないと言う人もいる。自分の宿は全て布団であるせいか、良いゲストが多い。

対応して思ったのは、ゲスト対応の担当者は人が好きな人がいいということ。新しく友達を作るのが好きな人、様々なことに興味関心を持てる人が合う。

自分のことで恐縮するが、自分はそういう部分が苦にならないせいか、ゲストたちにもホストが親切だったと評価されることが多い。Airbnbのレビューに部屋の評価があるのはわかっていたが、ホストの評価がこれほど書かれるのは意外だった。

ホスト不在型の民泊でも、やり取りをしっかり行い、ゲストとの対面していれば、十分顧客の満足度は高いようだ。

<筆者プロフィール> 児山秀幸(こやま・ひでゆき) 合法民泊やホステル・ゲストハウスなど簡易宿所の立ち上げや運営支援を手掛ける株式会社TAROコーポレーション代表取締役。旅館業法における「簡易宿所」の営業許可を取得した「タローズハウス鎌倉小町」を運営。Facebookグループ「簡易宿所・民泊ビジネス研究会」の管理人。Airbnbや民泊新法、旅館業法、特区民泊、東南アジア民泊、医療インバウンドなどに関するセミナー・コンサルティングも。

<前回号である第43回記事> 

【復刻・民泊革命(第43回)】 鎌倉合法民泊 運営体験記2