1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。
昨年12月6日一人の弁護士が江東区のワンルームマンションでの民泊運営をするのに、旅館業法の許可が必要ないことの確認訴訟を東京地裁で提起した。前代未聞の民泊訴訟は、いったい何をどうして問おうとしているのか。原告の石原一樹弁護士に訊いてみた。
旅館業法における旅館業は4種だけ
石原「厚労省は旅館業法の定義を定めているが、旅館業法を見ると、4つの類型は定めていても、旅館業そのものは定義されていない。例えば、1室で運営される民泊がその類型に当てはまるのかと言えば、当てはまらない。」
4つの類型とは、ホテル、旅館、簡易宿所、下宿である。ホテルは10部屋以上、旅館は5部屋以上、下宿は1カ月以上の宿泊が必要なので、民泊はこの3つには当てはまらない。すると、簡易宿所に当てはまりそうだが、「宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設」という定義からすると、部屋の丸ごと貸しを行う民泊は、簡易宿所に当てはまらない。以上より、民泊は旅館業に当てはまらず、許可を取る必要がないというのがその主張だ。
石原「例えば、道路交通法は、自動車を運転しようとする者は、免許を受けないといけないと規定している。そういう一般的な禁止が前提にあるから、車の運転のためには免許が必要になる。しかし、旅館業法では上記4つの類型の営業を営むには、許可が必要としか、規定されていない。」
とすれば、4つの類型に当てはまらない営業に旅館業許可が必要だというのは、行政機関が勝手に立法していることになるのではないか。新しく生まれた需要を旧態依然の類型に無理やり当てはめるのは、経済の発展を阻害する。
石原「旅館業の定義を行政機関が決めて、取り締まるのは良いとしても、最終的にその定義が法律上正しいかを決めるのは、司法機関。これまで、厚生労働省が掲げる『宿泊料を受けて人を宿泊させる営業』という旅館業の定義が正しいかを司法機関がチェックしたことはなかった。その機会を作りたい。」