【復刻・民泊革命(第60回)】 民泊ウォッチャー・そーたろー氏に聞く(後編)

1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。

 

 民泊関連の最新情報を毎日のように民泊ホストに流し、民泊に関する動画を流す民泊ちゃんねるを運営する民泊ウォッチャー・そーたろー氏。前回は簡易宿所について聞いたが、今回は現在の民泊新法と旅館業法改正の流れについて聞いた。

 

――現在のグレーゾーン民泊が、今回の民泊新法に対してどう対応するか、その代表例が簡易宿所だ。その簡易宿所について、そーたろーさんは、まだまだ不十分な制度だと言う。

そーたろー「『ルールを守れ』と同じくらいに『皆が守れる内容のルールなのか』という再点検が今の議論には必要だ。」

「ルール作りの時の設計があまりにも当事者以外で話し合われている点も問題だ。今回の新法に民泊ホスト側の意見はほとんど反映されなかった。」

――昨年前半の検討会は本当にそれを感じた。

そーたろー「運営者、利用者の声を取り入れなければ焦点のズレたルールが積み上がっていくだけだ。」

――その後法案にする流れの中にもホストの声は反映されなかった。民泊の現場からは遠い、賃貸業界の意見は反映されたようだ。

そーたろー「グレーだろうかブラックだろうが、民泊ホストはこの民泊新法の中で一番影響を受けるステイクホルダーだ。その意見を排除するというのは民主主義的と言えない。」

――形式的には違法な立場にある以上、民泊ホストの意見を聴くことはできないという、役所の立場も理解できるが、そーたろーさんの言いたいことも理解できる。本当に最適な制度を作るにはどうすべきかを考えると、ホワイトハンドなら良いという役所の考え方は、形式に縛られ過ぎているようには思える。

そーたろー「今回の規制は『規制する為の規制』という色が濃く、『どういう風にすれば機能する規制を作れるか』という視点が欠けている様に感じる。」

――確かに180日規制は、旅館業界以外、喜ぶ人はいない制度だ。

そーたろー「ホストに聞けば色々とアイデアがあるはず。一番の当事者だし、問題を直に把握している層なのだから。外野の人間からアイデア募るよりよほど効率が良い。」

「きちんと機能しないルールを作る位なら、急いで作らないで議論を継続する方がまだマシ。作ってから変える方がよほど大変だ」

――そこは難しいところで、今はインターネットのHPを作る時のように、トライアンドエラーを肯定する方向になってきているのではないか。今回も早期に制度の見直しが入ると聞く。

そーたろー「ルールは本来それに関わる人達を交えた上で作るべきだ。それが機能しているかどうかは、まず利用者に評価を下す権利がある。Airbnbについて議論はあるが、その仕組みが機能する事は既に証明されていると見て良い。」

 語りだすと止まらないそーたろー氏。民泊ホストの中でも、その情報を頼りにしている人が多く、キャラクターも愛されている。「民泊ちゃんねる」では、民泊新法の影響などについての最新情報を近日中にアップする予定なので、興味のある方は検索してほしい。

 

<筆者プロフィール> 児山秀幸(こやま・ひでゆき) 合法民泊やホステル・ゲストハウスなど簡易宿所の立ち上げや運営支援を手掛ける株式会社TAROコーポレーション代表取締役。旅館業法における「簡易宿所」の営業許可を取得した「タローズハウス鎌倉小町」を運営。Facebookグループ「簡易宿所・民泊ビジネス研究会」の管理人。Airbnbや民泊新法、旅館業法、特区民泊、東南アジア民泊、医療インバウンドなどに関するセミナー・コンサルティングも。

<前回号である第59回記事> 

【復刻・民泊革命(第59回)】 民泊ウォッチャー・そーたろー氏に聞く(前編)